「著作権フリー」を法律的に考える | 渋谷カケル法律事務所

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「著作権フリー」を法律的に考える

2019年3月11日

ブログを運営していると、「著作権フリー」と呼ばれる写真を使ったりします。

楽曲制作や音響効果の仕事をしていると、「著作権フリー」と呼ばれる楽曲や音源を利用することもあると思います。

いろんなジャンルの写真、音楽、効果音などの著作物(効果音は正確に言えば著作物ではありませんが、便宜上、ここではひとまとめに「著作物」と呼びます)が「著作権フリー」として有料だったり無料だったりで配布販売されていますよね。

有料無料問わず「著作権フリー」という呼び方がされていますが、たとえ無料で配布される場合であっても、実は「著作権フリー」という呼び方は法律的に正しくありません。

今回、「著作権フリー」 を法律的にきちんと整理しようと思います。
これは、「著作権フリー」の写真や音楽を配布している会社の利用規約を作成するためにもとても重要です。

1. 著作権の保護期間

まず、「著作権フリー」の著作物を販売している事業者は、当たり前ですが著作権を放棄しているわけでもなければ、著作権を譲渡しているわけでもないですよね。

もし著作権を放棄しているとすれば有償で配布(「販売」)しているのが矛盾になってしまいますし、著作権を譲渡しているとすればたくさんのユーザーに何重にも譲渡していることになり、やはり矛盾してしまいます。

ですので、「著作権フリー」といいつつ、著作権は放棄も譲渡もされていません。もちろん、著作隣接権も同様です。

著作権も、著作隣接権も、販売事業者(または著作者)に留保されているのです。

①「著作権フリー」の著作物についての著作権法上の権利の一切は、販売事業者に留保されている。

2. ユーザーはライセンス(利用許諾)を受けている

では、「お金を払ったユーザーはその著作物について何を得ることができるのか」というと、それは著作物のライセンス(利用許諾)を受けることができるわけです。

どういうライセンスかというと、ブログのアイキャッチ写真として利用したり、YouTube番組のBGMとして利用したり、映像作品の効果音として利用したりすることができるというライセンスです。

もちろん、ライセンスの具体的な条件は、商用利用可能だったり不可だったり、個人だけの利用に限定されていたり複数で利用することができたり、加工が可能だったり不可能だったり様々です。販売事業者の利用規約で一括で決められている場合もあれば、個々の著作物によって条件が違ったりもします。

ただし、ユーザーが著作物そのものを第三者に有償ライセンス(販売)したり、無償であってもライセンスすること(このようにライセンスを受けたものをさらにライセンスすることを「サブライセンス」といいます)は禁止されていることがほとんどだと思います。

②ユーザーは、販売事業者より、著作物のライセンス(ブログ等への掲載、音楽作品・映像作品への収録など)を受けることができる。そのライセンスの具体的な条件は、利用規約などによる。ただし、サブライセンスは禁止される。

3. ロイヤルティフリーという呼び方が適切

そして、ユーザーは、「無償」とされている場合を除き、ライセンスを受けることの対価(利用料金)を支払わなければなりません。支払方法は、従来は著作物ごとに一定の金額を支払う方式が多かったですが、最近は月額定額料金も選択できることが増えていますね。

その料金さえ支払えば、一定の条件のもとで、印税(ロイヤルティ)は発生せず、使い放題ということになります。

ですので、「著作権フリー」というより、「ロイヤルティフリー」という呼び方が実態に合っていると思います。

「著作権フリー」の「販売」と言いながら、法的には、「ロイヤルティフリー」での「有償ライセンス」というのが正しいわけです。

③ユーザーは、無償とされている場合を除き、ライセンスの対価として、一定の料金を一括払いまたは月額定額制により支払わなければならない。

ここまでが、販売事業者とユーザーとの契約の大枠です。

4. 販売事業者と著作者との契約内容は?

さて、次は、販売事業者と、販売事業者に著作物を提供している著作者との関係です。

販売事業者が著作者とはどのような契約をしているのかというと、

・販売事業者が著作者から、著作物の著作権法上の権利の「譲渡」を受ける方法

または

・販売事業者が著作者から、ユーザーに対して著作物の利用許諾を与えることの「許諾」または「代理権」を受ける方法

のどちらかになっています。

権利の「譲渡」の方がわかりやすいし販売事業者やユーザーにとって安心のように思いますが、意外と後者の権利処理のサービスもけっこうあります。

やはり、権利の「譲渡」となると著作者側に抵抗感があるため、「許諾」を得るだけにして著作者の抵抗をなくし、できる限り多くの著作物を集めたいという販売事業者の意図があるのかもしれません。

最近はクリエイターさんも権利についてしっかりしてますから、「何もかも譲渡してくれ」というわけにはいかないこともあります。

販売事業者としては「このサービスを運営するためには、著作者から最低限何をもらわなければならないか」を考える必要があるわけです。

5. まとめ

以上が、「著作権フリー」と呼ばれる著作物をめぐる権利関係でした。
「著作権フリー」販売事業者の方は、これらを踏まえて、利用規約を作成していただければと思います。

「著作権フリー」販売事業者の利用規約はけっこう個性的なものもあります。たとえば「いらすとや」さんの利用規約はとてもわかりやすくて面白いですよ。

おわり

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