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著作権法の1番わかりやすい解説 第11回 権利保護期間

2019年3月9日

いよいよ最終回です。

これまで、「著作権」「著作者人格権」「実演家の著作隣接権」「レコード製作者の著作隣接権」など、いろいろな著作権法上の権利を説明しました。

このような権利も永遠に続くわけではありません。権利もいつか消滅してしまいます。たとえば夏目漱石の小説やショパンの楽曲は、既に著作権が切れていて、誰でも自由に出版したり演奏したりすることができます。

今回は、どのくらいの期間、著作権法上の権利が保護されるのか(逆にいえば、いつ権利が消滅してしまうのか)ということを説明します。

著作権の保護期間は、2018年12月30日に著作権法改正が施行されて、「死後50年」から「死後70年」になる等の改正がされたばかりで、注目の話題です。

1. 著作権の保護期間

(1)原則

著作権は、著作物の創作のときに発生し、著作者の死亡後70年間、存続します(51条)。

逆にいえば、「死後70年」経過すると、著作権は消滅してしまいます。作家は早死にする人が多いですが、長生きすればするほど著作権は伸びます。

いつ公表されたのかは関係ありません。デビュー作であろうと、遺作であろうと、一律「死後70年」です。

正確にいうと、死亡した日については、死亡した日の翌年の1月1日からカウントされます。このカウント方法は、団体名義や映画や、著作隣接権の場合も同様です。

たとえば、僕が、今日(2019年3月3日)死んだとしても、僕が作った「りんねのね」の著作権は、今日からではなく、2020年1月1日から70年間存続することになります。これは著作者人格権や著作隣接権のカウント方法も同じです。

ちなみに、「著作者」の死亡後70年間であり、「著作権者」が生きていようが死んでいようが関係ありませんので、そこは注意です。著作者から著作権を譲り受けた「著作権者」がいて、その人が死んだとしても、著作権が相続人に相続されるだけのことです。

著作権が消滅した著作物を「パブリック・ドメイン(PD)」と呼びます。誰でも自由に利用できる著作物になります。

たとえば、夏目漱石の小説は誰もが自由に出版することができますし、シェイクスピアの脚本は誰もが自由に演劇に利用することができます。

(2)共同著作物の場合

たとえば、AさんとBさんが共同で作曲した楽曲(共同著作物)は、いつまで著作権が存続するのかという問題です。

この場合、AさんとBさんのうち長生きした方を基準にします。Aさんが先に死んで、Bさんがその後に死んだ場合、Bさんの死後70年間、その楽曲の著作権は存続します。

ちなみに、Aさんが作詞してBさんが作曲した楽曲は、共同著作物ではないですよ?これは「結合著作物」といわれる、ということを第2回で説明しました。この場合、歌詞はAさんの死後70年間、曲はBさんの死後70年間、著作権が存続することになります。歌詞と曲は別々にカウントするわけです。

(3)ペンネームの場合

ペンネームで発表された著作物の場合、著作権は、著作物の「公表」後70年間、存続します(52条)。

公表後70年経過すると消滅してしまうわけです。

ペンネームの場合、著作者が誰であるか分からず、いつ著作者が死亡したのか分からないことがあるので、「公表」のときが基準になっています。

この場合も、正確には、著作物が公表された日の翌年の1月1日から70年間です。

ただし、「藤子F不二雄」のように、ペンネームだとしても誰であるかが周知の場合は、その著作者の死亡後50年間、存続します。この場合は、「いつ著作者が死んだのか分からない」という事態は生じないためです。

(4)団体名義の場合

団体名義で発表された著作物の場合も、ペンネームの場合と同じく、著作物の「公表」後70年間、存続します(53条)。

この場合も、「公表」が基準になっています。団体の場合、永久に存続することもあるので、「公表」を基準にしなければならないわけです。

「団体名義」とは、新聞や映画やゲームなどの会社名義の著作物や、バンド名義で楽曲が発表された場合などが典型的です。

音楽の場合、実際にはボーカルが作詞作曲しているのにバンド名で公表するということもけっこうありますよね。ボーカル名義で公表すればボーカルの死後70年ですが、バンド名で公表すると、公表の時点から70年で著作権が消滅してしまうわけです。

見落としがちですが、けっこう違うので、実は重要です。

(5)映画の著作物

映画の著作物は、著作物の「公表」後70年間、存続します(54条1項)。

映画は、実名か団体名か問わず、一律、「公表」時が基準になります。これは、映画の場合、著作者(モダンオーサー)が多いので、著作者の死後を基準にしにくいという事情によります。

従来は、通常の著作物の保護期間は「死後50年」で、映画だけ特別で「公表後70年」だったのでバランスが取れていたのですが、今回の著作権法改正により、通常の著作物の保護期間が「死後70年」に延長されたので、結果的に、映画の著作物は保護期間が短めになってしまいました。

2. 著作者人格権、実演家人格権の存続期間

著作者人格権は、著作者の死亡により消滅してしまいます。

著作者人格権は、権利の譲渡をすることができず、相続されることもない、一身専属的な権利でしたよね。

ですので、著作者が死んでしまうと、その時点で消滅してしまうのです。

実演家人格権も、著作者人格権と同様、実演家の死亡により消滅してしまいます。

とはいえ、著作者や実演家が死亡した後も、生きていたとすれば人格権の侵害となるような行為を行ってはならないとされています(60条、101条の3)。

3. 著作隣接権の存続期間

実演家の著作隣接権は、その実演を行ったときから70年間、存続します(101条2項1号)。

「実演を行ったとき」が基準になります。実演家の死後70年間ではありません。

レコード製作者の著作隣接権は、レコード(CD)が発行されたときから70年間、存続します(101条1項2号)。

もし、原盤が制作されてから70年間ずっとレコード(CD)が発行されなかった場合は、原盤が制作されてから70年間で消滅する、とされています。

それぞれ、翌年の1月1日からカウントするのは著作権の場合と同様です。

著作隣接権と同様、実演家やレコード製作者がもつ使用料・報酬の請求権も、70年で消滅することになります。

4. 戦時加算

外国の著作物については、「ベルヌ条約」という条約の加盟国であれば、日本の著作物と同じ期間、日本で保護されます(ただし、その国の著作物の保護期間が日本より短い場合は、その国の保護期間に限り、日本で保護されます)。

もっとも、外国の著作物については、「戦時加算」という特殊な制度があります。

これは、「第二次大戦時に、日本は海外(連合国)の著作物の著作権を守っていなかった」という理由で、戦争当時に存在した海外の著作物の保護期間が最大10年4ヶ月ほど延長されるものです。

5. 法改正のこと

少しお話したように、2018年12月30日の著作権法改正の施行により、「50年」から「70年」に延長されました。

その対象は、2018年12月30日以後に著作者が亡くなった場合や、公表した著作物だけではありません。

2018年12月30日時点で著作権が保護されていた著作物については、保護期間が延長になります。具体的には、1968年以降に亡くなった著作者の著作権が延長されることになります。

逆に、2018年12月30日時点で既に旧法で著作権が切れてしまっている著作物については、保護期間が延長されることはありません。

6. 今回のまとめ

今回で、この連載は終了です。わかりやすく、とはいえけっこう詳しめに解説したので、この連載をよく理解していただくだけで、著作権法の基礎的な部分はマスターしていただけると思います。

ご意見ご質問などがありましたら、「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。全てのご意見やご質問に対応できるわけではありませんが、きちんと読んで、今後の記事に役立てようと思います。

おわり

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