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著作権の「譲渡契約」と「利用許諾契約」、どこが同じでどこが違うのかを解説

2019年2月19日

著作物を利用するクライアントからよく受ける相談に、

「著作者が著作権を『譲渡』することに難色を示しているが、『利用許諾』なら構わないと言っている。著作権の『利用許諾』でも問題はないだろうか?」

「著作権の『譲渡』と『利用許諾』は、具体的にどのような差異があるのか?」

というものがあります。

利用する側からすると、著作者より著作権の「譲渡」を受けておくことが安心ですが、そうすると著作者側にも抵抗があり、広くたくさんの著作物を集めることができないという不都合もあります。

ですので、利用する側として、「自社が考えている著作物の利用は、著作権の『譲渡』が必須なのか、それとも『利用許諾』でも構わないのか」を検討することが必要になります。

そのためにも「譲渡」と「利用許諾」の違いを理解していただければと思います。

まだ「著作権法の一番わかりやすい解説 第7回(著作権の取引)」を読んでいない方は、こちらを先に読んでいただければ、今回の記事もよりご理解しやすくなると思います。

⇒ 著作権法の一番わかりやすい解説 第7回(著作権の取引)

1. 法律上の地位の違い

Aさんがあるコンテンツの著作者とします。B社は、そのコンテンツを利用したいと考えている会社です。

(1)譲渡の場合

Aさんがコンテンツの著作権をB社に「譲渡」した場合、Aさんは「著作権者」ではなくなり、B社がコンテンツの「著作権者」になります。

ですので、たとえば、X社がAさんのコンテンツの海賊版を製造した場合、B社は著作権侵害を主張してX社に対して裁判を行うことができます。

ところで、万が一、AさんがB社にコンテンツの著作権を譲渡したあとに、さらにC社にもコンテンツの著作権を譲渡したような場合(二重譲渡)、B社とC社のどちらが著作権を取得できるかというと、先に文化庁で著作権を「登録」した方が勝ちます。譲渡の先後関係ではありません。

ですので、B社が確定的にコンテンツの著作権を取得するためには、Aさんから著作権の譲渡を受け、かつ、文化庁で速やかに登録をすればよいことになります(もっとも、文化庁への著作権の登録の制度は、実際はほとんど利用されていません)。

(2)利用許諾の場合

これに対して、AさんがB社にコンテンツを「利用許諾」したにすぎない場合、Aさんが依然として「著作権者」で、B社は著作権者ではありません。B社はあくまで「利用許諾」(ライセンス)を受けたにすぎません。

ですので、たとえば、X社がAさんのコンテンツの海賊版を製造した場合、B社は著作権侵害を主張することはできません。著作権侵害を主張して裁判を行うことができるのは、著作権者であるAさんになります。

また、著作権の「譲渡」の場合は、文化庁への「登録」により確定的に譲渡を受けることができますが、「利用許諾」の場合は、このような「登録」の制度がありません。ですので、万一、AさんがB社に著作権の「利用許諾」を行った後、C社に対して著作権を「譲渡」した場合、B社はコンテンツの利用権を失うことになってしまいます。

このように、「利用許諾」は、著作権の「譲渡」に比べると、地位が不安定であることは否めません。

ところで、著作権の「譲渡」の場合、著作権法第61条2項があるので、「翻案権」や「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」も含めて著作権を譲渡する場合には、契約書に、「著作権(著作権法第27条および第28条所定の各権利も含む)を譲渡する」と記載しておく必要があります。

⇒ 「著作権法の一番わかりやすい解説」第7回(著作権の取引)

また、著作権の「譲渡」の場合であっても、Aさんには「著作者人格権」が残るということにも注意です。

⇒ 「著作権法の一番わかりやすい解説」第3回

2. 独占的か非独占的かという違い

(1)譲渡の場合

Aさんがコンテンツの著作権をB社に「譲渡」した場合は、契約上、B社だけがそのコンテンツを独占的に利用することができます。

これは、B社が「著作権者」になるため、当然といえば当然です。もし、Aさんが、コンテンツの著作権をB社に譲渡して、さらに著作権をC社にも譲渡する、ということは契約違反になります(先ほどの説明のとおり法律上は二重譲渡は可能ですが、契約的に二重譲渡を認める契約は想定できませんので)。

譲渡 = 独占的利用が可能

(2)利用許諾の場合

「利用許諾」の場合は、2パターンがあります。「独占的利用許諾」なのか、それとも「非独占的利用許諾」なのかという違いです。

「独占的利用許諾」の場合は、著作権の「譲渡」と同様に、契約上、B社は独占的にコンテンツを利用することができます。

AさんはコンテンツをB社に独占的利用許諾した以上は、さらにC社やD社に利用許諾することは契約違反になります。

たとえば、小説家さんが映画製作会社に小説の「映画化」の利用許諾をする場合は、「独占的利用許諾」に当たります。

他方、「非独占的利用許諾」の場合、契約上、B社はコンテンツを独占的に利用することはできません。

Aさんは、コンテンツをB社に利用許諾し、さらにC社にもD社にも利用許諾するということが可能です。

たとえば、フォトストックなどのビジネスが典型例です。フォトストックの場合、多数の企業が利用許諾を得て同じ写真を使っていますね。

ですので、「非独占的利用許諾」は、著作権の「譲渡」とは大きく異なります。

「非独占的利用許諾」 = 独占的利用はできない
「独占的利用許諾」 = 独占的利用が可能

3. 第三者への譲渡・利用許諾の可否の違い

(1)譲渡の場合

Aさんがコンテンツの著作権をB社に「譲渡」した場合、B社は、さらにC社に対して著作権を譲渡することもできますし、C社に対し利用許諾をすることもできます。B社は「著作権者」ですので、これも当然といえば当然です。

(2)利用許諾の場合

これに対して、AさんがコンテンツをB社に「利用許諾」しただけの場合は、「独占的利用許諾」であろうと「非独占的利用許諾」であろうと、契約書に定めがなければ、B社がさらにC社に利用許諾することはできません(64条3項)。

逆にいえば、AさんとB社との契約で、「B社は、第三者に利用許諾できる」と定めておけば、B社がさらにC社に利用許諾することができます。

4. 期間、範囲などの違い

著作権の「譲渡」の場合、片道切符で永遠に渡っぱなしにするだけでなく、「10年間だけ譲渡」など期間を設定することもできます。10年経過したら、著作権が返ってくるわけです。

「譲渡」の場合に期間を定めることは少し違和感がありますが、著作権の取引ではめずらしくありませんし、音楽ビジネスなどではむしろ一般的です。

もちろん、「利用許諾」の場合でも「期間」を設定することもありますし、反対に「利用許諾の期間は著作権の存続期間」(つまり、無期限とすることもできます。

また、著作権の「譲渡」の場合でも、「利用許諾」の場合でも、「著作権のうち『複製権』と『公衆送信権』だけを譲渡する・利用許諾する」というふうに対象となる支分権を区切ることができます。

同様に、特定の支分権のうちのある利用態様だけ(たとえば「電子出版だけ」「インタラクティブ配信だけ」など)を譲渡・利用許諾することもできます。

ですので、期間や範囲については、著作権の「譲渡」と「利用許諾」には違いはありません。

5. 対価の決定方法の違い

「著作権の『譲渡』の場合は固定の金額、『利用許諾』の場合は印税方式」と誤解している方がけっこういらっしゃいますが、そのような決まりはありません。

著作権の「譲渡」の対価を「固定の金額でいくら」というように決めることもできますし、「印税方式で売上の何%」というように決めることもできます。

これは「利用許諾」の場合も同様です。

ですので、著作権の「譲渡」と「利用許諾」で、対価の決定方法が異なるわけではありません。

6. まとめ

このように、著作権の「譲渡」と「利用許諾」は法律上の意味合いは異なりますが、契約内容をしっかりと定めることにより、かなり類似させることができます。

「著作権の『譲渡』に比べると『利用許諾』は地位が不安定である」という点が大きな違いですが、通常のビジネス現場では著作権の「登録」までは行われないため、結局のところ、あまり変わらないことになります。

ですので、多くの場合、契約内容を工夫することにより、「利用許諾」であってもビジネスを十分機能させることができます。

おわり

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