著作権法の1番わかりやすい解説 第3回 著作者の権利 | 渋谷カケル法律事務所

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著作権法の1番わかりやすい解説 第3回 著作者の権利

2019年1月10日

1. 著作者の2つの権利

前回、「著作物」がどういうものか、ということを説明しました。
著作物を作った人(「著作者」)は、「著作権」「著作者人格権」という2種類の権利をもつことになります。

数人で著作物を作った場合は、全員が著作者になり、「共同著作物」になる、ということも前回お話しました。
今回は、原則として「著作者」がもつ「著作権」と「著作者人格権」という2つの権利の概要を説明していきます。

2. 著作権とは?

「著作権」は、著作物をしっかりと財産として保護するための権利です。文字どおり、「著作権法」の代表的な権利です。
ひと言で「著作権」と呼びますが、実は、「著作権」は、「複製権」「上演権(演奏権)」「公衆送信権」などの様々な権利の集合体なんだと思っていただければと思います。ひとつひとつの権利のことを「支分権」と呼びます。

「著作権」を根拠に、たとえば、「自分の楽曲を勝手にCDにするな」(複製権)と言うことができたり、「自分のマンガを勝手に漫画村にアップロードするな」(公衆送信権)と言うことができます。

このように、「著作権」があることにより、作曲家さんやマンガ家さんは、違法コピーや違法アップロードに対して法律で対処することができ、楽曲やマンガの財産的な価値を守ることができるわけです。

3. 著作者人格権とは?

「著作権」が著作物を財産として保護するための権利なのに対して、「著作者人格権」は、著作者の人格面、精神面を保護するための権利です。
著作物は、著作者が自分の思想や感情を表現したものなので、第三者から著作物を無造作に扱われては、著作者はとても気分を害してしまいます。

たとえば、ある作詞家さんが一生懸命に歌詞を作りました。ところが、誰かが勝手にその歌詞を元に替え歌を作ったら、その作詞家さんは怒ってしまうかもしれません。

このようなことがないよう、著作者には、「著作者人格権」という権利があるわけです。
「著作者人格権」も、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」「名誉声望保持権」という4つの権利から成り立っています。内容は、第8回で詳しく説明します。

4. 著作権と著作者人格権の比較

「著作権」は、財産的な権利ですので、「所有権」などと同じように、譲渡することができます。また、著作権者が亡くなると、相続人がその著作権を相続することになります。
ですので、著作者が「著作権」を譲渡して、「著作者ではない人が著作権をもつ」という場合があるわけです。
むしろ、音楽ビジネスの世界では、著作者でない人が著作権をもっていることが当たり前になっています(著作権をもっている人のことを「著作権者」と呼びます)。

「著作者」が「著作権者」とは限らない、というのはとても重要なところです。

このように、著作権は譲渡することができ、相続の対象にもなるのに対して、「著作者人格権」は譲渡することはできず、著作者が亡くなっても相続人に相続されません。

著作者人格権は、あくまで「著作者」の精神面を守るための権利だからです。ですので、法律上、著作者以外の人が著作者人格権をもつことはあり得ません。
このように、譲渡できない権利のことを「一身専属権」と呼びます。

たとえば、僕が「憧れで終わらせるな」という楽曲の作詞・作曲したとします。これにより、僕は「憧れで終わらせるな」の著作者として、著作権と著作者人格権をもちますね。僕が著作者であり、著作権者でもあるわけです。

そして、僕が「憧れで終わらせるな」の著作権をA音楽出版社に譲渡したとします。この場合、A音楽出版社は、「憧れで終わらせるな」の著作権をもっているので、著作権者です。
僕は、「憧れで終わらせるな」の著作権を失っていますが、変わらず「憧れで終わらせるな」の著作者ですし、著作者人格権をもっている、ということになります。

A音楽出版社は、著作権の譲渡を受けたので「憧れで終わらせるな」の著作権者ですが、だからからといって「憧れで終わらせるな」の「著作者」になるわけではないし、著作者人格権をもつこともない、ということに注意してください。

5. まとめ

今回、とても重要なことを説明しました。ちょっと混乱しがちなところですので、よく整理していただければと思います。

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