音楽イベントを開催するときの著作権の手続 | 渋谷カケル法律事務所

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音楽イベントを開催するときの著作権の手続

2022年7月15日

 昨今の情勢からオンライン配信等でも幅を広げ、賑わいを見せている「音楽イベント」。新しく自社でも開催したい!という方も多いと思います。
 しかし、メジャーレーベルからリリースされている楽曲などを利用する音楽イベントの開催のためには著作権の手続が避けては通れません。
というわけで、この記事では音楽イベントを開催するに際しての著作権の手続の方法をわかりやすく解説するよ。

目次
1. 著作権とは
2. 著作権がどのように管理されているか調べよう。
3. 申請方法のいろは
4. インターネット配信の場合
5. レコード会社のCD音源を利用したい場合
6. まとめ

1.著作権とは?

著作権とは、かんたんに言うと、自分が作った著作物(音楽など)を他人に利用されないように保護する権利のことです。
音楽の演奏をする場合にも、原則として、著作権が働くので、著作権者に無断で行うことはできません。
ですので、音楽イベントを開催する際にも、著作権の手続を行う必要があります。
※文化祭・学園祭のように、非営利で、お客さんからもお金を取らず、出演者にもギャラを払わないような音楽イベントであれば、著作権者の許諾なく、曲の利用することができます。
しかし、企業が主催するようなイベントは「非営利」とはいえませんので、著作権の手続が必要です。

2.著作権がどのように管理されているかを調べよう

では、どのような手続をすればいいのでしょうか。
メジャーレーベルからリリースされている楽曲などは、ほとんどの場合、JASRACまたはNexToneが著作権を管理しています。
まずは、どのように著作権が管理されているか、たとえばLisaさんが歌う「紅蓮華」とスピッツの「チェリー」を調べてみましょう。
(1)「紅蓮華」

(JASRACのウェブサイトより引用 https://www.jasrac.or.jp/


すると、次のような画面になります。


このように、「紅蓮華」は、LISAさんが作詞して、草野華余子さんが作曲して、ソニーミュージックパブリッシングが音楽出版社としてJASRACに著作権をJASRACに預けているということがわかります。
音楽イベントの開催は、「演奏会等」にあたります。「演奏会等」に「◯」がついているのはJASRACが「演奏会等」の利用分野を管理しているということを意味します。
なので、この曲を利用したいときはJASRACに申請すればいいことになります。申請方法については下の方で詳しく解説しています。
ちなみに、この楽曲は、「演奏」「複製」「複合」などすべての利用分野に「◯」がついており、これはすべてをJASRACが管理していることを意味します。(このことを「JASRAC全信託」と呼んだりします)

(2)「チェリー」
「チェリー」も同じようにJASRACのウェブサイトで調べてみましょう。



こちらを見てみると、JASRACが管理しているのは「上映/BGM」「社交場/カラオケ」権の
みであることがわかります。「演奏会等」には「✕」がついており、JASRACが管理していませんね。

そこで、つぎに、NexToneのウェブサイトで確認してみましょう。

NexToneのウェブサイトより引用 https://www.nex-tone.co.jp/


調べ方は、JASRACの場合と同様でOK。
JASRACが管理している「上映/BGM」「社交場/カラオケ」の利用分野以外を、NexToneが全て管理していることがわかります。このように、JASRACだけでなくNexToneの管理状況もしっかり確認していかなければいけません。
この場合でも申請方法は同様なので、下で併せて解説します!
他のどの曲も、このように調べることができますよ。

3.申請方法

まずは演奏利用申込書・演奏利用明細書を作成します。
音楽イベントの開催日の5日前までにFAX、郵送、支部の窓口に提出すると、JASRACから請求書が送られてくるので、コンビニ、クレジットカード等でお支払いしましょう!
詳しくはJASRACのサイトを確認してください。
https://www.jasrac.or.jp/info/event/pop.html
NexToneの場合には音楽利用の最初のみ利用者登録が必要になります。その後「PlayN(ク
リアランスシステム)」より利用申請をし、NexToneが審査・承認をします。
詳しくはNexToneのサイトを確認してください。
https://www.nex-tone.co.jp/copyright/users/event.html

4.インターネット配信もする場合

たとえば、YouTube Liveや、LINE LIVEなどを利用して音楽イベントをインターネット配信する場合を考えてみましょう。
インターネット配信は「インタラクティブ配信」という利用分野です。「インタラクティブ配信」をJASRACかNexToneが管理しているかを確認しましょう。
上の表をもう一度見てみましょう。「紅蓮華」は「インタラクティブ配信」をJASRACが管理していて、「チェリー」は「インタラクティブ配信」をNexToneが管理していますね。
「インタラクティブ配信」をJASRACかNexToneが管理している楽曲であれば、手続をすることなく、YouTube LiveやLINE LIVEで自由に配信することができます。
なぜなら、YouTubeやLINEは、すでにJASRAC・NexToneと包括的利用許諾契約をしているため、ユーザーが個別に申請する必要がないのです。
ほかにも、InstagramやFacebook、ニコニコ動画、SHOWROOMなども、JASRAC・NexToneと包括的利用許諾契約をしています。
ただし、配信だけでなくアーカイブも残すような場合は、利用者が企業(法人・団体)の場合にはJASRAC管理の外国曲は包括契約の範囲外となってしまうなどの一定の条件があります。

5.レコード会社のCD音源を利用したいという場合

これまでのお話は、あくまで演者が生演奏する場合の話です。音楽イベントで、レコード会社のCD音源を利用したいという場合は、著作権に加えて、「原盤権」の問題が出てくるので、注意が必要です。

(1)演奏会のみ。配信をしない場合
 音楽イベントで、CDをそのまま再生するのであれば、「原盤権」は働かないので、レコード会社の許諾は不要です。ただし、CDをそのまま再生するのではなく、USBメモリなどに複製して、それを再生するのであれば、厳密にはレコード会社の許諾が必要になります。
(2)インターネット配信もする場合
 音楽イベントの様子をインターネット配信する場合は、いわゆる「原盤権」が働く場面なので、レコード会社の許諾が必要となります。ただ、レコード会社は、JASRACやNexToneの場合と異なり、許諾が得られるかどうか、許諾が得られるまでの期間、料金なども様々です。

6.まとめ

ここまでで、曲を1曲使うだけでもこれだけの準備が必要なことがわかりましたね。
JASRACやNexToneの手続をきちんとすることで、音楽の作り手にきちんと還元されます。
利用する私たちもきちんとしたリテラシーを持ちながら楽しく安全に利用していきましょう!

文責・だいちぃ(監修・弁護士高木啓成)
だいちぃプロフィール

渋谷カケル法律事務所でインターンとして働く大学1年生。
将来、エンターテイメントを扱う弁護士になるべく奮闘中。

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