渋谷カケル事務所のスタッフ山本です。

前回は、著作権の中でも頻出度の高い「複製権」について取り上げました。本日は、成立要件として複製権と少し似ている「翻案権」を見ていきましょう。

以下の3例の中で、どれが翻案権の侵害にあたるでしょうか。

(A)とても可愛らしいキャラクターのイラストを見つけ、気に入ったので、色を変えてキャラクターのグッズ販売をした。

(B)有名なバイオリンのクラシック曲を、チェロ用に編曲した。

(C)元々児童向けだった絵本を、成人向けに内容をより膨らませた小説に書き換えた。

…いずれも、オリジナルの作品に第三者が手を加えた、という共通点がありますが、翻案権の侵害にあたるのは(C)のみです。

条文上で、翻案権は以下のように規定されています。

「なんだかやけに具体的な条文だなぁ」と思われるかもしれませんが、翻訳権・編曲権・脚色や映画化はまとめて「広義の翻案権」と呼ばれることもあり、本コラムでも細かいものは全て広義の翻案権として記載します。

さて、翻案権では、以下の4つのポイントが重要になります。

★既存の著作物に依拠すること

★その表現上の本質的な特徴の同一性を維持すること

ここまでは前回の複製権と同じですね。

翻案権では更に、以下2つの要件が必要になります。

★具体的表現に修正、増減、変更等を加えて新たな思想又は感情を創作的に表現すること

★これに接するものが既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作するものであること

(江差追分事件、最高裁平成13年6月28日判決)

 つまり、翻案権と見なされるには、ただオリジナルを真似してパクるだけでは足らず、新たな創作性を表現しなければならない。ただ、あまりにも原作からかけ離れていて、オリジナルを想起すらできないなら、それは完全に別の著作物に当たり、権利に抵触しない…ということです。(そもそも二次的著作物に該当しない)

 冒頭の例を見ると、(A)は色以外はオリジナルと同じキャラクターなので、依拠と類似性はありますが、創作性はありません。翻案権よりも複製権の侵害に近いでしょう。

 (B)も、バイオリン用の楽曲を類似する弦楽器のチェロ用にするだけでは、既存の楽曲に創作性を加えたと言い難いでしょう。例えばクラシック曲をヒップホップ風にアレンジする等、原曲に大きく付加的価値を与える必要があります。

 その点、(C)は、原作の絵本に依拠し同一性がありながら、絵本だけでは汲み取れない細部まで膨らませて、小説ならではの新しい創作性があります。上記で記載した4点を全てクリアしているので、翻案権に該当します。

※引用元:「弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール」https://www.amazon.co.jp/dp/4817849436/